10月1日からの最低賃金改定に向け、各都道府県で改定額の決定が進んでいます。近年の物価高や人手不足を背景に、今年も高水準の引き上げが行われる見通しです。
※最低賃金の適用(発効日)は都道府県によって異なり、10月1日以降順次改定されます。詳細は各都道府県労働局のホームページをご確認ください。
ランクごとの目安
各都道府県の引上げ額の目安については、Aランク54円、Bランク56円、Cランク56円。
注.都道府県の経済実態に応じ、全都道府県をABCの3ランクに分けて、引上げ額の目安を提示している。現在、Aランクで6都府県、Bランクで28道府県、Cランクで13県となっている。
各都道府県に適用される目安のランク
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ランク |
都道府県 |
金額 |
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A |
埼玉、千葉、東京、神奈川、愛知、大阪 |
54円 |
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B |
北海道、宮城、福島、茨城、栃木、群馬、新潟、富山、石川、福井、山梨、長野、岐阜、静岡、三重、滋賀、京都、兵庫、奈良、和歌山、島根、岡山、広島、山口、徳島、香川、愛媛、福岡 |
56円 |
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C |
青森、岩手、秋田、山形、鳥取、高知、佐賀、長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島、沖縄 |
56円 |
※厚生労働省「令和8年度地域別最低賃金額改定の目安について」より
「最低賃金が上がるけれど、最低ラインまで給与を上げるだけでいいのだろうか?」
最低賃金の改定時期を迎えるにあたって、このように悩まれている経営者の方も多いのではないでしょうか。
結論から言うと、単に対象者の給与を最低ラインまで引き上げて終わりにしてしまうと、既存社員との賃金バランスが崩れるなど思わぬ問題につながることがあります。
今回の最低賃金引き上げは、単なるコスト増や法対応として捉えるのではなく、「パート社員の働き方」や「月給制社員も含めた会社全体の賃金体系」を前向きに見直す絶好の機会です。
本記事では、10月改定に向けて確認すべき「月給制社員の正しい計算手順」と、最低賃金引き上げを前向きな組織づくりにつなげる「2つの視点」を分かりやすく解説します。
「時給制のアルバイト」はもちろんですが、企業で特に見落とされがちなのが「月給制の正社員や契約社員」です。月給で支払っていても、時給換算した金額が最低賃金を下回っていれば法違反となります。
特に注意が必要なのが、「残業代や各種手当の計算基礎から外さなければならない手当」をそのまま含めて計算してしまっているケースです。
「うちは月給25万円払っているから最低賃金なんて余裕でクリアしている」と思っていても、最低時給を切っている可能性があります。
その内訳に住宅手当や役職手当、固定残業代、通勤手当などが多く含まれている場合、最低賃金の計算から除外しなければならない手当を差し引くと、「実質的な基本給部分」が時給換算で最低賃金を割ってしまっていることも。
本記事で正しく最低賃金を認識できているか、確認してみましょう。
最低賃金の対象となる賃金は、毎月支払われる基本給や手当がベースとなります。以下の計算式で、自社の月給制社員の換算時給をチェックしてみましょう。
(最低賃金の基礎になる金額の合計) / 所定労働時間(月平均)
このとき、分子の給与から必ず除外しなければならない手当は以下の通りです。
参照:厚生労働省最低賃金の対象となる賃金
例えば「通勤手当や家族手当を含めて20万円」となっている場合、それらを差し引いた基本給部分のみで時給換算を行う必要があります。
最低賃金の引き上げを「単に人件費が増えるだけ」と捉えるのはもったいないです。最低賃金の引き上げを従業員のエンゲージメント(貢献意欲)や生産性を高めるきっかけと捉えてみませんか?
時給が上がると、年収の壁に達しやすくなり、パート社員から「シフトを減らしたい」という相談が増えがちです。しかし、ただ扶養内に収まるよう勤務時間を削るだけでは、本人にとっても手取りが増えず、会社にとっても人手不足に悩むという「双方にデメリットがある状態」になってしまいます。
そこで重要なのが、「社会保険に加入して、もっとしっかり稼ぐ働き方」へのシフトを会社側から提案することです。
現在、社会保険の適用拡大が進んでおり、短時間労働者が保護される環境が整いつつあります。改定を機にパート社員と面談を行い、「労働時間を少し伸ばして社保に入ることで、将来の年金額が増える」「手取りを維持・増加させながら安心して働ける」といった選択肢を提示することで、会社の貴重な戦力として長く活躍してもらうためのポジティブな機会に変えることができます。
参考:厚生労働省社会保険適用拡大特設サイト
最低賃金が上がった際、「最低ラインに引っかかるパートや新人の賃金だけを引き上げる」という後手後手の対応をしてしまうと、長年会社を支えてきたベテラン社員や正社員との賃金差が縮まり、モチベーションに影響を与えることがあります。
そのため、一部の賃金を底上げして終わりにするのではなく、「会社全体の賃金バランス(給与体系)を整えるタイミング」と捉えることが大切です。
ここで最も避けたいのが、「下限に引っかかった人だけを改定後の賃金に合わせて終わりにする」という付け焼刃の対応です。
これをやってしまうと、社内の評価や役職、勤続年数に応じた賃金バランス(格差)が一気に崩壊します。
改定にあたっては、「各基本給や手当をどういった目的で支給しているのか」を改めて確認することが不可欠です。「責任の重さ」「スキルの高さ」「勤務形態の違い」に対して正しく対価が支払われているか整理し、全体の賃金バランスを整えていきましょう。
※パートと正社員の手当や待遇のバランスについては、過去の記事『「同一労働同一賃金ガイドライン」への実務対応』でも詳しく解説していますので、ご確認ください。
最低賃金の引き上げは、単なる「法対応」や「人件費のコスト増」にとどまるイベントではありません。自社の労働環境や組織のあり方を見直す絶好のアップデートの機会です。
今回のポイントを改めて整理しておきましょう。
最低賃金改定を機に賃金体系や働き方を整えることは、既存社員の満足度を高め、今後の採用力強化や離職防止にも大きく貢献します。
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