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2026年10月改正「同一労働同一賃金ガイドライン」への実務対応 - FOLIO

作成者: FOLIO|Jul 1, 2026 7:59:29 AM

そもそも「同一労働同一賃金」とは?

同一労働同一賃金とは、一言で言えば「同じ仕事をしているのであれば同じ支給をし、違う仕事であれば違いに応じた支給をしなければならない」というルールです。法律上、以下の2つの視点(待遇基準)で成り立っています。

  1. 均等待遇(差別的取扱いの禁止=同じなら同じ)
    職務内容(業務内容と責任の程度)が同じで、かつ異動の範囲(配置転換や転勤の有無・範囲)も同じである場合、パートや有期雇用であることを理由に差別をしてはならない(正社員と全く同じ支給をしなければならない)というルールです。
  2. 均衡待遇(不合理な待遇差の禁止=違いに応じたバランス)
    職務内容や異動の範囲に「違い」がある場合、その違いに応じたバランス(不合理ではない格差)にしなければならないというルールです。「正社員と全く同じ支給」にする必要はありませんが、「パートだから一律ゼロ」のように、違いを考慮に入れない極端な格差はNGとなります。

なぜ今、改正されるのか?

「同一労働同一賃金」は、2020年4月から大企業、2021年4月からは中小企業にも全面適用されています。しかし、施行から数年が経過した現在も、多くの企業で「正社員だから」「パートだから」という抽象的な理由での待遇差が残っているのが実態です。

こうした状況を踏まえ、厚生労働省は2026年10月1日に「同一労働同一賃金ガイドライン(指針)」を施行後初めて改正します。

今回の改正は、新しい法律ができるわけではありませんが、近年の最高裁判決(日本郵便事件、長澤運輸事件、ハマキョウレックス事件、メトロコマース事件等)の判断基準を明確にガイドラインへ落とし込んだため、「これくらいなら大丈夫だろう」というこれまでの曖昧な運用が、今後は「違法(不合理)」と判定されるリスクが高まります。

【参照】 厚生労働省:「令和8年改正の概要」

     「パートタイム・有期雇用労働者に関する ルールが変わります」

2026年10月改正のポイント(何が変わるのか?)

今回の改正は、これまで判断基準が曖昧だった「退職金」や「各種手当」「休暇」について、具体的な一線が引かれた点です。特に以下の項目について、「不合理な格差」とみなされる具体例が追加されました。

家族手当・住宅手当の見直し

  • 家族手当:契約更新を繰り返しており、今後も継続して働くことが見込まれるパート・有期社員に対して、正社員と異なる基準にしたり、支給しなかったりすることは不合理(違法)と明記されました。
  • 住宅手当:正社員と同様に、転居を伴う異動(転勤)の可能性がある有期社員に対して、住宅手当を支給しないことは不合理(違法)となります。

退職手当(退職金)の基準明確化

退職金には「長年の功労報償」や「後払い給与」の意味合いがあります。職務内容や責任の重さに多少の差があったとしても、「パートだからゼロ」ではなく、その相違(貢献度や勤続年数など)に応じた「均衡のとれた額」を支給しない場合は不合理と判定される可能性が高まります

賞与・その他手当・休暇の追加

対象項目

改正後の基本的な考え方(不合理となる例)

賞与(ボーナス)

業績への貢献度に応じた支給である場合、パート・有期にもその貢献度に応じた支給(格差の縮小)が必要。

無事故手当

業務内容が同じであれば、雇用形態に関わらず同一額を支給しなければならない。

夏季冬季休暇

正社員に付与している場合、パート・有期にも同一の休暇を付与しなければならない。

雇入れ時等の「説明義務」強化

労働条件を明示する際、労働者から「正社員との待遇の差や、その理由について説明を求めることができる」旨を、会社側から事前に書面等で明示することが義務付けられます(派遣労働者等も対象となります)。労働者が会社に質問しやすい環境が法的に整備されます。

直面する「3大リスク」

「うちはパートさんが納得しているから大丈夫」という理屈は、法的なトラブルの前には通用しません。対策を怠った場合、以下のリスクを負うことになります。

  1. 民事訴訟と過去に遡った差額請求リスク
    労働者から訴えられた場合、最高裁の判決ベースで「過去数年分の手当や賞与の差額」の支払いを命じられるリスクがあります。1人あたり数百万円、複数人になれば数千万円規模の損害になりかねません。
  2. 行政指導と「企業名公表」のリスク
    都道府県労働局からの是正勧告に従わない場合、企業名が公表され、採用活動や企業の社会的信用に大打撃を与えます。
  3. 現場のモチベーション低下と人材流出
    「同じ仕事をしているのに、パートだから手当がつかない」という不満は、現場の離職率を跳ね上げます。人手不足の時代において、求職者からも選ばれない会社になってしまいます。

企業が取り組むべき「3ステップ対策」

2026年10月の施行に向け、今から段階的に社内制度の点検と見直しを進める必要があります。

【ステップ1】
全雇用の洗い出しと現状把握(現在の就業規則・賃金規程・労働契約書、労働条件通知書の確認)

【ステップ2】
「待遇差」の抽出と、理由のロジックチェック(なぜ差があるのか、説明できるか?)

【ステップ3】
就業規則の改定・賃金原資のシミュレーション(手当の新設や基本給への統合など)

⚠️注意すべきポイント:正社員の引き下げは原則NG

格差をなくすために「正社員の手当を廃止してパートに合わせる」という手法は、正社員に対する不利益変更となり、新たな労使トラブルを生みます。基本的には、パート・有期社員の待遇を底上げするか、職務内容(役割や責任、異動の範囲)を明確に分ける方向で調整します。

さいごに

今回のガイドライン改正は、一見すると「人件費が上がる」「面倒な手続きが増える」というコストに見えるかもしれません。

しかし、裏を返せば「がんばって成果を出しているパートタイマーが、正当に評価されて長く働いてくれる仕組み」をつくる絶好の機会です。待遇差の理由をロジックとして説明できるようにすることは、御社の評価制度や賃金体系をすっきりさせ、経営をより強固にすることに繋がります。

まずは、現在の「労働条件通知書」と「賃金規程」のどこにリスクが潜んでいるかの確認し、必要な修正、改訂を行い、10月に向けて、安心できる強い組織を作っていきましょう。

【参照】改訂後の労働条件通知書モデル様式

 

免責事項:

本記事の内容は2026年6月現在の法令・公表資料に基づいています。今後の法改正や通達により、取り扱いが変更される可能性があります。最終的な税務判断や個別の事案への適用については、必ず税理士にご相談ください。

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