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業績ダウン時の資金繰り対策~中間申告で手元の現金を残す「仮決算」の活用法~- FOLIO

作成者: FOLIO|Jul 6, 2026 8:29:19 AM

「ある日突然、税務署から中間申告の用紙が届いて驚いた」「今期は売上が落ちて赤字なのに、なぜこんなに高い税金を払わなければいけないのか?」

会社の経営を続けていると、本決算から数ヶ月経過した頃にやってくるのが「中間申告」のタイミングです。前期の業績が良かった企業ほど、中間申告の納税額の大きさに目眩を覚えることもあるでしょう。特に、今期の業績が悪化している場合、この中間申告は会社のキャッシュフロー(資金繰り)を直撃する致命的な一撃になりかねません。

さらに近年、国税庁のデジタル化(e-Tax推進)に伴い、「法人税の予定申告書や納付書がオフィスに届かなくなる」という実務上の大激変が起きています。「通知が来ないから」と放置していると、取り返しのつかないペナルティを課されるリスクもあるため注意が必要です。

この記事では、法人税と消費税の中間申告の仕組みから、2025年から始まった「送付取りやめ」の罠、そして資金繰りを劇的に楽にする「仮決算」のメリット・デメリットについて解説します。

中間申告の制度を理解し、自社の手元資金を守るための最適な判断を下せるようになりましょう。

そもそも「中間申告」はなぜ必要?対象となる会社の基準と通知時期

そもそも、なぜ事業年度の途中で税金を納めなければならないのでしょうか。

国や地方自治体からすれば、年1回の本決算だけでは税収が特定の時期に偏ってしまいます。これを平準化し、国家財政の収入を安定させることが大きな目的の一つです。また、納税者(企業)側にとっても、1年分の税金を一度にまとめて支払うより、半分を先に支払っておく(前払いする)ことで、本決算時の納税負担を分散できるという大義名分があります。

中間申告はすべての企業に義務付けられているわけではありません。法人税法および消費税法において、それぞれ「前年度の納税実績」を基準に、対象となるかどうかが厳密に定められています。

法人税の中間申告の基準

法人税(国税)において中間申告が必要となるのは、原則として以下の要件を満たす法人です。

  • 対象基準:前事業年度の確定法人税額(国税分のみ)が20万円を超える場合
  • 申告・納税の期限:事業年度開始の日以後6ヶ月を経過した日から2ヶ月以内(例:4月決算法人であれば、11月末日まで)

【注意】地方税(法人住民税・法人事業税)についても、国税である法人税の中間申告義務に連動して、同様に中間申告(予定申告)を行う必要があります。

消費税の中間申告の基準

消費税の中間申告は、法人税よりも基準が細かく分かれており、前年度の消費税額(地方消費税を含まない国税分のみ)に応じて、年間の申告・納税回数が「1回」「3回」「11回」と変動します。



【実務の落とし穴】納付書が届かない!「送付取りやめ」の最新ルールと無申告リスク

これまで中間申告といえば、「時期になれば税務署から勝手に納付書や申告書が送られてくるもの」というのが実務の常識でした。しかし、その常識は現在、完全に崩れ去っています。

国税庁のペーパーレス化・DX推進に伴い、現在、e-Tax(電子申告)を利用している法人や、納付書を使用しない方法で納税している法人に対しては、法人税の中間(予定)申告書および、紙の納付書の送付が原則として取りやめとなっています(法人税のみ取りやめ)。

何が起きているのか?

  • 以前:郵便をチェックしていれば、納税額が印字された書類が届き、期限を察知できた。
  • 現在:紙の書類は一切届かず、代わりにe-Taxの「メッセージボックス」へ電子データでお知らせ(通知)が届くのみ。

放置するとどうなる?「無申告」の怖さ

最も危険なのは、「今年は納付書が届かないから、うちは中間申告の対象外なんだな」と勘違いして放置してしまうケースです。

後述するとおり、「予定申告」であれば「申告書を提出しなくても期限日に申告があったものとみなされる(みなし申告)」という規定があるため、申告書の未提出については罰則はつきません。しかし、「税金の納付」自体が遅れたことに対する延滞税は、容赦なく日割りで発生します。

さらに、「今期は赤字だから仮決算でゼロにしよう」と計画していた企業の場合、紙の通知が来ないことで期限を忘れてしまうと、仮決算の手続き自体が一切受け付けられなくなり、キャッシュフローに支障をきたすことになります。

中間申告の時期が近づいたら、必ず自らe-Taxを確認するか、顧問税理士へ確認を取る仕組みを作っておくことが必須です。

基本は「前期実績の半分」を払う!「予定申告」の仕組みとメリット・デメリット

中間申告の時期を迎えた際、別な手続き(仮決算など)をしない限り、自動的に適用されるのが「予定申告」という方法です。

これはシンプルに「前期の納税実績の半分(消費税で回数が多い場合はその割合分)を、とりあえず前払いしてください」という仕組みです。

予定申告のメリット

  • 実務の手間が「ほぼゼロ」

e-Taxのメッセージボックス等に届いた通知内容(金額)を確認し、期限までにその金額を納税するだけで完了します。新たに決算を組む必要がないため、税理士への追加報酬も原則として発生しません。

予定申告のデメリット

  • 業績悪化時にキャッシュアウトが激しくなる

最大のデメリットは、「今期のリアルな業績が完全に無視される」という点です。例えば、前期は非常に好調で大きな利益が出たものの、今期に入って大口顧客を失ったり、業界全体の不況に巻き込まれたりして「現在は大幅な減益」というケースを考えてみましょう。この場合でも、予定申告では「前期の好調だった実績に基づいた金額」の納税を求められます。

手元に現金がないにもかかわらず、多額の納税が発生することになるため、会社の資金繰りを急速に悪化させ、最悪のケースでは黒字倒産のリスクを引き起こす可能性があります。

今期の業績が大幅な減益の場合は必見!資金繰りを救う「仮決算」という選択肢

「今期は明らかに赤字なのに、前期の基準で何百万円も税金を払うなんて不可能だ……」

そんな経営者の悲鳴を救うために用意されているのが「仮決算(仮決算による中間申告)」という制度です。

仮決算とは?

仮決算とは、事業年度の開始から6ヶ月間(消費税で回数が多い場合はその期間ごと)を一つの独立した事業年度とみなして、実際に帳簿を締め、臨時の決算を行う手続きのことです。

この仮決算によって算出した「中間期の実際の利益」をベースにして、法人税や消費税を計算し、中間申告を行うことができます。

仮決算を行う最大のメリット

もし、今期の最初の6ヶ月間が「赤字」であった場合、仮決算を組むことで、法人税の中間納税額を「0円」にすることができます。

また、消費税についても、中間期の売上(預かった消費税)よりも仕入れや経費、設備投資(支払った消費税)が多く、計算上マイナスまたは大幅に減少している場合は、中間申告における消費税の納税額を「0円」または大幅な減額にすることが可能です。

すなわち、本来なら数十万、数百万円規模で出ていくはずだったキャッシュを、合法的に手元に残すことができます。これが仮決算という制度が持つ、最大の資金繰り防衛策です。

【税法上の厳密なルール】仮決算を選ぶ前に知っておくべき3つの注意点

仮決算は非常に強力な味方ですが、税法上の厳密な要件や、実務上のデメリットも存在します。「納税が減るなら、とりあえず仮決算にしよう」と飛びつく前に、以下の3つの注意点を必ず押さえておいてください。

注意点1:予定申告の額を超えての仮決算による申告はできない(または意味がない)

法人税法第72条等の規定により、仮決算によって計算した税額が、予定申告による税額を超える場合は、原則として仮決算による中間申告を行うことができません。

また、仮決算による税額のほうが低かったとしても、計算の結果、予定申告額とほぼ変わらないのであれば、わざわざ労力をかけて仮決算を行う意味は全くありません。

注意点2:仮決算の段階では「税金の還付」は受けられない

中小企業の経営者様からの最も多い誤解が、「仮決算で大きな赤字が出たから、前期に納めすぎた税金が今すぐ還付されるんですよね?」というものです。

残念ながら、中間申告(仮決算)の段階では、税金の「還付」を受けることはできません消費税の仮決算において、中間期の計算結果がマイナス(還付分が発生)になったとしても、その段階で国からお金が振り込まれるわけではなく、あくまで「中間申告としての納税額が0円になる」という処理にとどまります。事業年度末の「本決算」の申告で還付金が発生した場合のみ、還付金が振込まれます。

注意点3:本決算と同等の実務コストと税理士報酬が発生する

仮決算は、文字通り「仮」の決算ではありますが、税務署に提出する書類の厳密さは本決算とほぼ変わりません。

そのため、仮決算を税理士に依頼する場合には、通常は「仮決算報酬(追加費用)」が発生します。

「削減できる税金の額」と「発生する実務コスト・税理士報酬」を天秤にかけ、費用対効果があるかをシミュレーションすることが鉄則です。

どちらを選ぶべき?「予定申告」vs「仮決算」の判断フロー

自社が「予定申告」を進めるべきか、それとも「仮決算」を選択すべきか、以下の3ステップの判断フローでチェックしてみましょう。

【Step 1】今期前半(6ヶ月)の業績はどうか?

・前期と比較して「良い」または「同等」の場合:予定申告一択となります。わざわざ手間とコストをかけて仮決算を組むメリットはありません。

・前期と比較して「大幅な減益」または「赤字見込み」の場合:【Step 2】へ進みます。

【Step 2】社内の「資金繰り(キャッシュ)」に余裕はあるか?

・手元資金に十分な余裕がある場合:予定申告を選び、社内の実務負担や税理士報酬の手間を省くのが合理的です。

・手元資金に余裕がなく、少しでも納税を減らしたい場合:【Step 3】へ進みます。

【Step 3】削減できる税額は、税理士報酬等の「コスト」を上回るか?

・「削減できる税額>税理士報酬等のコスト」の場合:仮決算を選択すべきです。手元にキャッシュを合法的に残す大きなメリットがあります。

・「削減できる税額<税理士報酬等のコスト」の場合:予定申告が無難です。仮決算で税金が減っても、税理士への追加報酬の方が高くなってしまっては費用倒れになってしまいます。

 

【Point】中間申告の原則は「予定申告」です。「業績悪化」「資金繰り悪化」「節税効果が大きいの3条件が揃う場合に、「仮決算」を検討しましょう。

実務Q&A(よくある3つの疑問)

Q1. 中間申告の紙の納付書や申告書が届かなかったため、期限を過ぎてしまいました。ペナルティはどうなりますか?

A. 「予定申告」の場合は自動的に申告があったとみなされるため無申告のペナルティはありませんが、納付の遅れによる延滞税は発生します。また、「仮決算」を狙っていた場合は手遅れになります。

まず「予定申告」の場合、法人税法第73条の規定(みなし申告)により、「期限日に、予定申告書の提出があったものとみなされる」というルールがあるため、書類を出していなくても罰則(無申告加算税など)はありません。しかし、前述の通り「紙の通知や納付書が届かない」のは税務署の仕様です。気づかずに「納付」が遅れてしまうと、期限の翌日から延滞税が日割りで発生してしまいます。

さらに致命的なのは「仮決算」をしようとしていた場合です。仮決算による申告は、期限に1日でも遅れると一切認められなくなります。自動的に「予定申告」が確定してしまうため、「通知が来なかったから」という言い訳は通用しません。必ず自主的な期限管理が必要です。

Q2. 消費税だけ「仮決算」、法人税は「予定申告」というバラバラの方法を選んでも大丈夫ですか?

A. はい、完全に別個の制度ですので、自由に組み合わせることが可能です。

「法人税は前期並みに利益が出そうだから手間のない『予定申告』にするけれど、消費税は今期前半に多額の設備投資をして預かり消費税が減っているから『仮決算』にして納税を0円にする」といった戦略的な使い分けは、実務上非常によく行われます。自社の状況に合わせて最適な組み合わせを選びましょう。

Q3. 中間申告で納めた税金は、最終的な本決算のときにどのように精算されますか?

A. 本決算で計算した「年間の総税額」から、中間申告で「前払いした金額」が全額差し引かれます。

仮に本決算での年間の法人税額が300万円、中間申告ですでに150万円を前払いしていた場合、確定申告時に納めるのは差額の150万円となります。

もし、今期通期での最終的な年間の税額が100万円だった場合、中間で150万円を前払いしているため、差額の50万円が本決算の申告後に国から還付されます。中間申告で払った税金は、決して掛け捨てにはならず、最終的に必ず精算されるのでご安心ください。

まとめ

 

中間申告は、国から言われるがままに支払うだけの受動的なイベントではありません。会社の業績やキャッシュフローの状況に応じて、「予定申告」と「仮決算」という2つの武器を経営者が主体的に選択できる重要な機会です。

特に、足元の業績が厳しい企業にとって、仮決算は手元のキャッシュを守るための極めて有効な防衛策となります。

しかし、昨今の「税務署からの納付書・申告書の送付取りやめ」により、企業側がスケジュールをより自律的に管理しなければならないリスクも高まっています。「うちは今年、中間申告が必要なのか?」「仮決算を行うことで、具体的にいくらのキャッシュが浮くのか?」の判断やシミュレーションには、専門的な税務知識と事前の確認が不可欠です。

免責事項

本記事の内容は、2026年6月現在の税法および関係法令に基づき、一般的な解釈・取り扱いについて記載したものです。税制改正や行政手続きの変更等により、将来的に取り扱いが変更となる可能性がございます。また、個々の企業の具体的な状況(各種特例の適用要件など)によって税務上の判断は異なります。実際の税務申告や意思決定にあたっては、必ず顧問税理士または管轄の税務署へ事前にご相談の上、最終的な判断を行ってください。

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