出所:「競争の戦略」(マイケル・Eポーター)より著者作成
買い手の交渉力における「買い手」とは、自社及び競合他社の製品・サービスの購入者を指します。 交渉力の強さとは、価格の値下げや品質の向上など、顧客からの要求の強さのことです。買い手の交渉力が強いと値引きなどを要求され、その市場では価格競争に陥りやすく、結果的に収益を上げにくくなります。
② 売り手(供給業者)の交渉力売り手の交渉力における、「売り手」とは、自社及び競合他社に部品や原材料を供給している「供給元の業界」(=サプライヤー)のことを意味します。 サプライヤーの力が強いと、原材料などの仕入価格は高騰し、企業の収益性は低くなります。このような場合、不利な取引条件になり、利益が減る、適切な価格が保てないという脅威が生まれます。
③ 業界内競争業界内競争とは、同業他社との競合状況の強さのことです。具体的には、競合の数、競合の経営資源、競合商品の優位性などを分析します。 同程度の規模の企業が業界内にひしめいていれば、競合他社の脅威が大きくなり価格競争などを通じて自社の収益は低くなる状況が生まれます。
④ 新規参入の脅威その業界が新規参入しやすいかどうかを意味します。参入障壁が低い業界では、新規参入企業が多くなり、競争が激化することが考えられます。 例えば、国家資格と政府の許認可が必要とされる医療業界は「参入障壁が高い」ですが、初期投資を抑えて独自のサービスを創造できるIT業界は、「参入障壁が低い」と言われています。
⑤ 代替品の脅威代替品の脅威とは、既存の製品やサービスが、顧客にとって同様のニーズを満たす他の製品やサービスで置き換えられてしまう脅威です。 写真を例にとると、且つては、フィルムカメラだったものが、デジタルカメラに移行し、今ではスマートフォンのカメラで、顧客のニーズは満たされていきました。 つまり、自社製品と同じ、もしくはそれ以上の高品質、低価格の優れた代替品が現れた時、脅威が大きくなり、企業の収益は低くなる可能性があります。
iPhoneは、アップルの高いブランド力によって、買い手=ユーザーの交渉力を弱めています。アップルのiPhoneは高くても購入しようとするユーザーが多いため、アップルは価格を高く維持でき、収益性も高くなるのです。
▪売り手の交渉力アップル社は、生産設備や工場をもたずに、製造をアウトソーシングするファブレス経営を取り入れており、多くの提供先と提携を結んでいます。 スマートフォンの液晶パネルは今や技術革新や低コスト生産により競争は激化している状況で、売り手としては価格を下げてでも販売せざるを得なくなります。このようにサプライヤーを固定せず、調達先を多く確保することによって、売り手に対する交渉力を強めているのです。
▪業界内競争スマートフォン市場は、韓国のサムスンや中国のファーウェイなど、メーカーと技術、価格、デザイン等で互いに競い合い、シェアを奪い合っています。2020年の世界出荷台数ランキングでは、1位:サムスン、2位:アップル、3位:ファーウェイとなっていますが、この中でもアップルは前年度比で販売台数を増加させており、今後も市場の競争は益々激化していくとみられます。
▪新規参入の脅威中国のシャオミは2010年の創業からわずか7年で世界有数のメーカーになりました。 スマートフォン市場は、製品の技術革新で量産体制のハードルが低くなっているため、新規参入の脅威は更に大きくなっていきます。
▪代替品の脅威例えばこの先アップルウォッチのようなウェアラブル端末などの画期的な新商品の誕生によって、iPhoneだけでなくスマートフォン市場が代替品の脅威にさらされることになります。